970622
池袋から東武線に乗って坂戸で越生線に乗り換える。 駅を2つ3つ過ぎるにつれ、山が近付いてくる。関東平野の行き止まりだ。
14:50 越生駅に着いた。 大高取山から越生梅林あるいは桂木観音へ降りる道は、梅や紫陽花の時期になると毎年のように歩いているコースだ。 今回の目的はもちろん紫陽花だった。
駅前は去年と全く変わっていない。 人の気配がない自転車預り所や古びた食堂も相変わらずだ。 駅前の信号を右に曲がり、薬局の角を左に入る。 坂道を登りお寺を過ぎてさらに登ると世界無名戦士の墓に出る。
いつもは静かな広場が今日は賑わっていた。 100人くらいの団体が休んでいる。「歩こう会」と書いた旗を持っている人もいた。 石段を登り切った丘の上に世界無名戦士の墓がある。 屋根が大きな展望台になっているその白い建物は、越生の田園地帯からよく見える。
賑やかな墓を足早に通り過ぎて山道に入る。 目指すは5分ほど登ったところに見晴らしの良い場所だ。 今日は霞んで見えないが、この丘の上からは越生の市街地のはるか向こうに池袋や新宿のビルが見える。 いつもの切株で遅い昼食を取って休んでいると、さっきの団体が帰っていくようで賑やかな声が下の方に降りていった。やはり山は静かじゃなきゃいけない。
腰を上げて大高取山を目指す。すぐ展望がなくなり、杉林に入る。 杉の間をまっすぐ登る。きつい登りが終るとそこは小さな白樺林だ。 木の間から南東の方角が見渡せる。ひとやすみして、階段を下る。 十字路を右に曲がるとここから尾根道だ。右下に見えるゴルフ場は、数年前まで造成中だった。
ここからもう一度登りになる。 展望のない杉林の直登が終ると、ちょっとした広場に出る。 広場といっても杉林が適当に間伐されているだけの場所だ。 ここを右に行くと大高取山、左に行くと桂木観音である。
15:10 せっかく来たからにはやはり山頂に寄らねば。3分ほど登ると山頂に着いた。 先客に挨拶する。この山頂で人に会うのも珍しい。 3人のハイカーがいなくなるといつもの静かな山頂に戻った。 ここは林の中で展望が効かないのがちょっと残念だ。 いつの間にか南西側をわずか伐採したようで、木の間から向うの山がちょっと見えた。
山頂で10分ほど休んでから桂木観音へ向かう。 さっきの分岐点から南へ尾根筋を辿る。 「山火事注意」の赤い垂れ幕は少しも変わった様子がない。 かつての展望台らしき場所は、木々が生い茂って展望はない。 古びて転がっている展望図だけがここから見える山々を覚えている。 高麗川の谷を隔てて奥武蔵の山々が名を連ねていた。
さらに登ると山頂に小さな標識があるだけの桂木山。 桂木観音の裏山といった感じで一気に降りると桂木観音に降りる。 古びた神社は、たまに訪れる参拝客が去ると静かだ。 子供が漕いでいたぶらんこが、いつまでも揺れていた。
期待していた紫陽花は、年々少なくなっているようで、かつて見た半分くらいしか無かった。 根元近くから折れていたり、ブランコの近くなんかは根こそぎ無くなっているようだ。 階段を降りて鐘衝き堂のあたりは健在だった。でも上の方はやはりかつての面影は残っていない。
紫陽花自体はちょうど見頃といった感じで、枯れている花は殆んど無かったのが救いだ。 曇り空だったが、雨ならもっと映えただろう。 車道はここで行き止まりになるが、撮影中も車で参拝客が何人か訪れた。 そのたび鐘の音が山の中に吸い込まれてゆく。
桂木観音からいつもは東毛呂まで歩いているのだが、今回は越生まで戻ることにした。 こちらの方がいくぶん近そうだし、駅前の酒屋のビールが目当てだったりもする。 標識を左に曲がって虚空蔵尊への道を辿る。 林の中の道を登り切ったところで、右側の展望が開けた。 規則的に植林されたまだ若い木々の緑色が鮮やかだ。 やがて道は沢を渡り、広場に出るとそこから川沿いの林道になった。
だんだん道幅が広くなり、虚空蔵尊に出るとここからはすっかり里の風景になる。 道の左右にある水田には、まだ背の低い稲が頭を出していた。ところどころにある看板には「蛍保護地域」と書いてある。 暗くなるとちょうど蛍の見頃になるのだろう。まだ4時なのでとてもそれまで待っていられない。
16:30 道標通りに里の道を辿り、駅に着いた。予定通りビールを買って越生始発の電車に乗っていつもより早く帰った。