970824
南アルプス日帰り登山シリーズとして今回は甘利山に登ることにした。 駅からのアプローチが長いが、夏のうちなら帰り暗くなる頃は車道歩きになるので大丈夫だろう。
朝6時過ぎに家を出発。時間の計算を失敗して始発の特快に乗れなかった。 韮崎に着いたのは10時過ぎ。地図の見方を誤って線路の反対側を歩き回ってしまった。 韮崎は南北を川で挟まれているうえ、どちらを見ても山なので道に迷いやすい。 自転車のおじいさんに道を聞いて駅まで戻る。50分近く時間を無駄にしてしまった。 今度は地図の通りに船山橋に着く。川原がコスモス畑になっていた。
橋を渡り、甘利山の標識の方に曲がるとあとは1本道だ。 まだこのあたりは標高も 500m 程度で暑さが堪える。着ていたTシャツは汗でびしょびしょになった。 2本目の 500ml のジュースを飲み終るころ、人家が無くなり小さな公園に着いた。 荷物を下ろしてTシャツを脱いで汗を絞る。 道はここから先は曲がりくねった山道になった。 舗装された道路は車は殆んど通らないので最短コースを歩いた。
「甘利山10km」の標識があった。峠ではないのでひたすら登りだ。川を2つ渡り 1000m を越えるあたりになるとようやく風が涼しくなってきた。汗は乾かない。 途中、何度も休みながら1時間ほど登ると「甘利山5km」の標識があった。 栗平を過ぎ、いいかげん歩き疲れたころ椹沼キャンプ場に着いた。 トイレを掃除しているおじさんに聞くと水は消毒してないのでそのままでは飲めないそうだ。 とりあえず汲んで持っていくことにする。
広河原グリーンロッジまで行けば水もあるだろう。 とにかくロッジを目指して歩く。車が2台ほど止まってバーベキューをやっていた。 荒れ果てた白鳳小屋を過ぎる頃には、暑さでかなり体力を消耗していた。 山道は何度も車道と出合い、車道をしばらく登るとまた山道に入る。 車道を登っているうちは良いが、山道に入ると傾斜がきつくなり少し登っては休むことを繰り返す。 気持ちは先に進むのだがもはや体がついていかなかった。 長い山道の途中、何度目か休んだところで車の音が聞こえた。 距離からしてもうロッジは近いようだ。 最後の気力を振り絞って登ると視界が急に開けた。
駐車場には車が10台ほど止まっていた。無線の移動運用している車もいる。 ベンチに荷物を下ろす。水道があった。 飲めるだけ水を飲んで、水筒をいっぱいにする。 観光客で賑わっていたが歩いて登ってきたのは僕くらいのものだろう。 ここから最後のひと登りで甘利山に着いた。
なだらかな山頂一体はお花畑で、マツムシソウやワレモコウ、スズランにヤナギランなどが咲き乱れている。 山頂に雨カッパを広げて横になる。太陽は雲に隠れていて暑さは感じなかった。 車の便が良いので観光客が多い。少し霞んでいたが富士山が雲の上に見えている。 しばらく横になって疲れも回復してきたので、荷物を置いて千頭星山の方へ歩いてみることにした。 山頂から少し下るとスキー場への道が右に下っている。 そこから登りになり、しばらく登っても展望は良くならない。 先が長そうなので引き返すことにした。
甘利山山頂に戻り、お湯を沸かしてカップラーメンを食べた。 登った時は食欲が無かったが、少し休んだせいか何とか食べることができた。 お茶を飲んでいると、目の前のワレモコウにトンボが止まった。 写真を撮ろうとすると飛んでいってすぐまた同じところに戻ってずっと止まっている。 16:00 を過ぎたので下ることにした。とんぼはまだ止まっていた。
駅までは4時間弱で着く計算で、19:43 の電車に間に合えば良いと 広河原で水を汲んで山道を下る。 登りであんなに辛かった急坂はあっという間に降りてしまった。 誰もいなくなった椹沼に寄り道して写真を撮る。あとは長い車道歩きだ。 行きと同じコースを下るだけなので気分的には楽だが、車道ではペースが上がらないのが辛い。 山の向うの入道雲が夕日に染まっている。ヒグラシが鳴いていた。 富士山も紫色の空に融けそうにかすかに浮かび上がっている。
山の入口の公園に着くころは日も落ちてすっかり暗くなっていた。 この辺りまで下りると蒸し暑さを感じる。 行きに自販機にあったスポーツ飲料が売り切れていたので、オレンジジュースを買って飲みながら歩いた。 犬が吠えている。 ところどころ街灯があったりなかったりする道で、交差点で犬の散歩のおじさんに駅までの道を聞いた。 「武田橋の方が近いよ」ということでそちらの道を歩く。急がなければ電車に間に合わないかもしれない。 少し歩いたところで車が横に止まった。助手席に犬が乗っている。 運転手が何か言っているが窓を閉めたままなのでさっぱり聞こえない。 「乗せてくれるのかな?」と思って立っていたら後のドアを開けてくれた。 さっきのおじさんだった。わざわざ家へ戻って車で来てくれたのだ。 好意に甘えて駅まで送ってもらうことにする。 地元のおじさんでも甘利山にはめったに行かないそうだが、つつじ祭の頃は花がきれいだということだった。
駅に着きおじさんにお礼を言って車を下りた。 まだ電車まで時間があったので駅前のヨーカドーで夕食を買う。 あまり食欲が無かったので冷しとろろそばを買った。 飲み物を物色していると、アクエリアスの2Lボトルが \194 だったので買ってしまった。
韮崎始発の甲府行き列車はがらがらだった。 特急へ並ぶ人たちの列を横目で見ながら、あまり混んでない甲府からの上り列車に乗り込んだ。 車窓から見る甲州街道は渋滞の車のテールランプがつながっていた。