案の定雨になった。昨日のうちに燧岳に登って正解だった。けれどテントの中でじっと待っていると、やがて雨は上がった。
雨は上がったとはいえ、燧岳、至仏山とも山頂は雲に覆われていた。
鳩待通りを歩く。アヤメ平まで尾根沿いの湿原の中、木道が続く。 左側の見通しが良く、霧に霞む箱庭の風景が広がる。
尾根を過ぎるとまた湿原の中、木道は続く。至仏山は霧の中だ。
山頂付近は雲の中だった。気温は5℃。かなり寒い。予定どおり、以前は通れなかった山ノ鼻コースを下る。
山ノ鼻コースはとても滑りやすい。階段で転んで背中を強く打った。 5合目を過ぎると雲が晴れて湿原が見え始めた。
夕方になると湿原から人影が消える。ヒツジ草のあいだを雲が横切る。
一瞬、雲が切れると夕陽に照らされた燧岳の山頂が見えた。
そして月が昇る。湿原にはもう誰もいない。