北岳


位置
北緯35°40' 東経138°15'
標高
3192m
地図
甲府/市野瀬/仙丈ヶ岳
交通
JR甲府駅からバスで広河原
ガイド
日本第2の高峰。東面にかかる岩場は「北岳バットレス」とよばれる
区分
日本百名山

980919-20

あらかじめ購入しておいた「かいじ切符」で 9:30 新宿発の「かいじ103号」に乗り込む。入線までに並べば座れるくらいの混み工合だった。 11:16甲府着。駅前の6番のバス停には既に団体らしいザックの列ができていた。 ザックを置いて、駅前の吉野屋で食事する。12時近くに2台のバスが来た。 最後の1人で1台目のバスに乗る。その後も2台目のバスから溢れた人が乗って来て通路が埋まった。 定刻12:00 を5分ほど遅れて発車。バスの乗客全員の目的地が広河原なので、直行するらしい。 混み合う車内を車掌が切符を売って回る。珍しくワンマンバスじゃない理由は後になってわかった。 途中、芦安と夜叉神峠で停車。4分休憩ということだったが、実際は10分くらい停まっていた。霧に包まれた道の両脇の駐車場は車で一杯だった。 夜叉神峠の長いトンネル(林道では一番長いそうだ)を抜けると霧が晴れた。 北岳が見えるそうだが雲がかかっていて山頂は見えなかった。 ここからの山道は狭い上に曲がりくねっていて、左側は 400m もの崖になっている。 よくこんなところに道を作ったものだ。車掌と運転手で確認し合いながら、時には車掌が降りて対向車を誘導しながら進む。 あちこち沢が流れていて、滝状になっているところもあった。今年は水量が多いそうだ。

2時過ぎ、ほぼ予定通りに広河原到着。殆どの人はそのまま村営バスに乗り換えて北沢峠に行くようだ。 地図を確認して吊り橋を渡る。広河原山荘を過ぎると山道に入った。途中の水場で、甲府駅で汲んで来た水筒の水を入れ替える。 大樺沢分岐を過ぎると急坂になった。今回はテント一式を背負っているので背中の荷物が重い。登り初めてすぐ、長そでを脱いでTシャツ1枚になった。 途中、降りてくる人何人かとすれ違う。まだ最終バスに間に合う時間だ。 何度か休みながら登る。直登の斜面にはところどころ梯子がかかっていた。 やがて下りてくる人もなくなり、静かな山を1人で登った。ブナの林に霧がたちこめていい感じだ。 1時間ちょっと登ったところでやっと直登が終わった。ここからは斜面を巻いて行く道になる。 目印に従って進んでいると、どうも怪しい道になった。ルートファインディングしていると、眼下を他のパーティーがトラバースしていった。どうやら崩落のためコースが変わったらしい。古い目印は消しておいて欲しいよなあ。 霧はいつの間にか霧雨に変わっていた。まだ雨具を出す程では無い。 水の音が聞こえて来たと思ったら沢に出会った。水量は豊富だ。手ですくって飲んでみる。冷たくて美味しい南アルプスの天然水だ。 水筒の水を入れ替えて、顔を洗って一息付いた。御池小屋はすぐ近くだった。

4時過ぎに小屋に着く。洗い場があり、水道の蛇口がついている。キャンプ場を探して進む。小屋の横は既にテントでいっぱいだったので、白根御池のそばの平らなところを選んで張ることにした。小さな池の周りには8張り程のテントがあった。荷物を下ろして小屋で手続きをする。1人1泊 400円だが、ビールが目に付いたので合わせて 900円の出費になった。 雨は次第に気になるようになってきた。風が無いので静かな雨だ。霧で遠くはよく見えない。 荷物が濡れないうちにテントを張ってしまうことにする。張りながらビールとチョコレートで腹ごしらえをした。 地面が固くペグが打てないので石にロープを張って、万一風が吹いても飛ばされないようにする。 作業が終わってテントに入り、明るいうちにランタンのマントルを焼く。 煙がテントの中に入ってくるのを手で扇いで外に出した。 まだ食事には早いのでしばらく横になって休む。外では後ろのテントの2人の青年がずっと話をしていた。

5時をだいぶ回ったので食事の支度をする。雨は相変わらずだが、火が消える程ではない。テントの中から手だけ出して湯を沸かしレトルトご飯とハヤシライスを暖めた。 お湯が吹きこぼれてきたのでインスタント味噌汁を作って飲む。 食べ終わってもまだ明るかった。せっかく準備したランタンも使わずに済むかなあと思いながら横になった。周りも食事の支度を始めたようで賑やかだ。 しばらくうとうとして気が付くと暗くなっていた。まだ少し明るいのでランタンを付けて持って来たウイスキーをちびちび嘗める。 ラジオの7時のニュースを聞く。天気予報は概ね良さそうだが山の天気なのでよくわからない。 ニュースが終わって本格的に寝ようとうとうとしたところで、人の声が聞こえた。 もう既に暗いのにこれから隣にテントを張るようだ。張り終わっても長々と話し込んでいて、9時を過ぎた頃に近くのおじさんにうるさいと怒られてから静かになった。


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5時に目覚ましをかけてあったが、その前に目が寒くて覚める。テント内の気温は7℃くらいだ。何とかシュラフから手を出してランタンを付けた。 しばらくするとテントの中もだいぶ暖まってきたようだ。シュラフから這い出して、シャツを着てズボンを履いた。ちょっと湿っぽい。シュラフとシュラフカバーの間に入れておけばよかった。 テントから顔を出してみる。だんだん明るくなる空にはまだ星が見えた。 雲ひとつ無い良い天気だ。寒いが我慢できない程ではない。お湯を沸かしてインスタントスープとパンの食事をする。 支度をして 5:40 出発。キャンプ場からモルゲンロートに染まる北岳が見えた。

斜面を巻くように歩いて、6:04 二俣に着く。ここで右俣と大樺沢コースが別れる。かなり上の方から沢が勢い良く流れている。 登り口を探すのにちょっと手間取った。雪渓はもう殆ど無い。 赤い矢印に従って登る。2600m あたりで軽い貧血のような症状が出始めた。高山病が始まったのだろうか。それほどひどくは無いのでペースを落として慎重に登る。 岩だらけのコースの途中に小さな滝があった。荷物を下ろして水を飲む。 冷たくて美味しい。ついでに顔を洗った。



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いつの間にか高山病も直ったようだ。調子良く登っていると上の方からしきりと人の声がする。山頂かなと思ったがよく見るとバットレスに取り付いているパーティーの声だった。 あちらの賑やかさに比べて、こちらはまだ誰にも会っていない。そう思いながら下を見ると登ってくる人が小さく見えた。さっきまで全く気付かなかったのでかなり足が速いのだろう。 途中、何組か下山してくるパーティーとすれ違った。ガレ場を登りきり、木の梯子をいくつか登って 7:47 八本歯のコルに着いた。 間ノ岳に続く稜線がダイナミックに迫る。


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尾根伝いに岩だらけの坂を登る。途中から振り返ると富士山が見えた。 稜線からは間ノ岳方面の展望が素晴しい。疲れをしばし忘れて登り切ったところが間ノ岳と北岳の分岐点だ。 仙丈岳方面の展望が開ける。

ここからの急な登りが苦しい。山頂はもうすぐそこだ。8:31 山頂到着。 日本で2番目に高い山頂とは思えないほど穏やかだ。心配していた高山病の症状も全く無い。遠くに富士山、近くには間ノ岳、仙丈岳、甲斐駒ヶ岳のパノラマが広がる。甲斐駒の向こうに八ヶ岳、仙丈岳のはるか向こうに北アルプスの山々までが遠望できた。


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8:58 去り難い山頂を後にする。9:27 肩の小屋に到着。あまり広くないがテント場もある。休まずそのまま先に進む。途中でイワヒバリを見かけた。


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9:47 草スベリ分岐到着。ここから草スベリという急坂を一気に 500m 下る。途中からキャンプ場の自分のテントが小さく見えた。


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10:34 白根御池キャンプに帰還。湯を沸かしてラーメンを食べて、テントを撤収。 11時過ぎに下り始める。途中すれ違ったのはたった1組だった。 広河原ロッジまで歩いて、13:43 発のバスに余裕で間にあった。