鳳凰山


EOS-1,EF75-300/4-5.6IS,F5.6AE,RVP,PL,981011
位置
北緯35°42' 東経138°18'
標高
2840m
地図
甲府/韮崎/鳳凰山
交通
JR甲府駅からバスで夜叉神峠
ガイド
観音岳を主峰に地蔵ヶ岳、薬師岳を称して「鳳凰三山」という
区分
日本百名山

970705

はるかな南アルプス

一昨年、入笠山の帰りに道に迷って、青柳駅で2時間以上電車を待った。 下り電車から降りてきたおっちゃんが駅寝の準備を始めた。翌日に入笠山に登るそうだ。 かなりあちこちの山に登っている強者らしいおっちゃんが、 「南アルプスは、いいよ」つぶやくように言った言葉は今でも不思議と覚えている。

東京から南アルプスは遠い。 夜行列車で行ける妙高あたりの方が近く感じられるくらいだ。 そのアプローチの不便さゆえ、日帰りで鳳凰山に登れるとは思ってもいなかった。

出発


EOS IX E,EF135/2L,F2.5AE(1/350),RX

前夜 23:40 車で青葉台駅を出発。 八王子付近から国道20号に入り、西へ進む。穴山を越えて山に入る。 林道は未舗装になり、精進ガ滝駐車場を過ぎ峠に入ると、急に道が悪くなった。

峠を登り切ったあたりに登山道入口があるはずなのだが、暗いせいか見つからない。 いちど御座石鉱泉まで下りてから戻り、ようやく林道の分岐点に辿り着いた。 青木鉱泉までの迎えを頼み、車を下りて林道を登る。 空はだんだん明るくなって来るが、足元はまだ暗い。登山道入口は見つからない。 土砂崩れの影響などでやっと歩いて通れるくらいの林道を進む。 だいぶ歩いたところで地図を広げてみると、やはり登山道を通り過ぎているようだ。 戻る途中で夜が明けてきた。 八ヶ岳は雲に隠れている。朝焼けが雲を染める。写真を撮っているとすっかり明るくなってしまった。

荒廃


EOS IX E,28/1.8,F2.5AE(1/20),RX

5:08 登山道入口発見。林道を入ってすぐのあたりに古い道標があった。 字がもうすっかり消えているが、鳳凰山の入口には間違いなさそうだ。 地図に書いてある道ではあるが、あまり歩かれていないようで草や木に埋もれている。 道を外れないよう注意しながら進むと、途中で道は崩落していた。 ヤバそうだなと思ったが、かすかな踏跡を頼りに何とか崩落地点の上まで登ることができた。 ここから先はもう道というよりは踏跡しかない。樹林の中を、とにかく上へ上へ登る。 ルートを外れているという不安はあったが、方角は合っているので登れば尾根 道に辿り着くはずだ。

尾根道


EOS IX E,28/1.8,F8AE(1/180),RX

5:55 尾根道に辿り着いた。ほっとして腰を下ろすと眠気が襲ってきた。 しばらくうとうとしていたが5分ほどで目が覚めた。 1000mを越えると真夏でも寒いくらいだ。汗はすっかり乾いてしまった。 樹林の中をジグザグに登る。 登りがきついせいと、寝不足のためか気力がもたない。 ちょっと登って休んでは、寒くて歩き出すのを繰り返していると「7合目」と書かれた石のところに着いた。まだ 6:32 だ。先は長い。

傾斜は相変わらずきつい。途中、鳳凰小屋から下りて来た人とすれ違った。 短い木の梯子がかかっていたりするが、中には朽ち果てているものもある。 休みながら登っていくと急に見晴らしが良くなった。 旭岳の山頂だ。 南側が大きく崩れていて下を見るとちょっと恐い。地蔵岳方面は雲がかかっているようだ。 小休止のあと出発。登っている間は寒さを感じない。 このアプローチの長さは百名山に相応しい。

7:46 30分ちょっと登ると燕頭山に着いた。笹原が広がる静かな山頂だ。 ここで既に 2000m を越えている。 ここから先は小さなアップダウンを繰り返す楽な道だ。 ヒトリシズカ(だと思う)が群生している。 途中、何箇所か崩落した場所があったが、木の橋が渡してあったりした。 大きな崩落現場は通行止めで、鎖でザレ場を横切る新たなルートが設定されていた。


地蔵岳


EOS IX E,28/1.8,F5.6AE(+1/2)(1/90),RX

9:30 最後のひと登りで鳳凰小屋に着いた。まるで旅館のように立派な小屋だ。 小屋の主人と思われる人が七輪で火を起こしていた。 もうみんな出発したようで静かだ。荷物を下ろして湧き水を飲む。冷たくてうまい。 空になった水筒に水を入れて、地蔵岳目指して出発。 シラビソの林の中をジグザグに登る。 だんだんと木は少なくなり、森林限界を越えると霧の間から稜線が見えてきた。 白砂は踏み応えが無く歩きづらい。 崩れやすい斜面の踏跡を辿って登る。砂の上に獣の足跡が点々とついていた。 半分ほど登ると高山植物のお花畑に出た。草の間のところどころに小さな黄色や白の花が咲いている。見上げると地蔵岳のオベリスクはすぐそこだ。


EOS IX E,28/1.8,F8AE(+1/2)(1/125),RX

時折り吹く突風に足止めを食いながら、鞍部に着いた。 賽ノ河原と呼ばれるこの場所には、たくさんのお地蔵さんが強風に耐えていた。 気温は 11〜12°Cだが、風が強くて体感気温はかなり低くなりそうだ。 雨カッパを出して着込む。手袋を持ってくれば良かった。 荷物を置いて目の前に聳えるオベリスクに取り付いた。 10:50 頂上近くのお地蔵さんがある岩におそらく地蔵岳のプレートがかかっていると思うのだが、風化していて字は読みとれなかった。 ここから先は激しい岩登りになりそうなのでとりあえずパスして、次の観音岳を目指すことにする。

観音岳


EOS IX E,28/1.8,F8AE(1/180),RX

賽ノ河原まで戻り、荷物を背負って稜線を西に辿る。 登り切ったところがアカヌケ沢ノ頭だ。さっき登った地蔵岳が間近に見える。 北岳方面は雲で隠れていた。 岩だらけの足元の道ははるか下り、そしてまた登って観音岳へと続く。 このダイナミックな稜線の眺めは実際に登ってみなければ味わえないものだ。 強風は雲を巻き上げ、観音岳の山頂は見えかくれしている。風の弱まるのを待って写真を撮った。



EOS IX E,28/1.8,F8AE(+1/2)(1/125),RX

稜線を下り、登りにかかった頃にはだいぶ疲れが出てきた。 風は西から吹いていて追い風に近いのでいくぶん楽だ。 途中ですれ違ったおじさんの「山頂はいい眺めだったよ」という言葉を励みに、ガレた坂道を登る。 振り返ると、アカヌケ沢ノ頭の向うに地蔵岳が見えた。左には高嶺の山頂も見える。

登り切ったピークの向うに山頂があった。西側に深く落ちている谷を雲の影が走る。 12:15 観音岳山頂到着。2840m は今回の最高地点だ。八ヶ岳の手前に甲府盆地 が広がっている。この山頂は賑やかだった。といっても10人もいない程度であったが。

薬師岳


EOS IXE,28/1.8,F5.6AE(1/350),RX,PL

薬師岳の双耳峰が雲に見え隠れしてる。思ったより近いようだ。 鳳凰小屋まで戻ってドンドコ沢を下った方が景色は良さそうだが、 12時を過ぎてしまったので、薬師岳経由でそのまま中道登山道を下ることにする。 雲の切れ間から指す日差しが強い。突風で砂が飛んできて顔に当たって痛い。

12:55 薬師岳山頂に到着。岩の陰に座って風が過ぎるのを待つ。 こちらは誰もいない静かな山頂だ。ゆっくりしたかったけど、風で身動きが取れないので下山することにした。 山頂からは薬師小屋や夜叉神峠に続く尾根道がよく見えた。

遭遇


EOS IXE,28/1.8,F8AE(1/180),RX,PL

山頂近くの岩に赤いペンキで大きく「青木→」と書いてある。 わかりやすいのは良いが、落書みたいでなんかへんだ。 霧でも出るとよっぽど道がわかりにくいのか、赤ペンキは岩づたいに点々と続いている。 山頂を下りて間もなく、大きな平らな岩があった。登って仰向けになる。 雲がどんどん流れてゆく。 2000m から見る空は下界で見る空の色と全く違う青さのような気がする。 気持ち良かったが、そのうち寒くなったので出発。

山を歩くのはいつも一人だが、宗谷岬で買った小さな鈴をつけて歩いている。 熊避けのおまじないのつもりだが、効果は疑わしい。 岩と這松で見晴らしの良い斜面も下るに従ってだんだん木が増えてくる。 向うの林の中で「ガサガサッ」と音がした。 「誰かいるのかな?」と思ったが山菜取りするような場所でも無い。 立ち止まって音のした方を見ると、熊が逃げていくところだった。 心臓がどきどきしている。20mほど離れていただろうか? 真っ黒でそれほど大きくないやつだ。

熊が去った後はまた静寂が戻ってきた。声を出しながら歩くことにした。 途中で3組の登山者とすれ違ったが、熊の話をすると皆びっくりしていた。 中道登山道は飽きるほど長い。登りに使うのは大変だと思った。 13:50 御座石という大きな岩に着いた。麓までおよそ 1/3 の地点だ。 下っていくと、道はだんだん緩やかになりクマザサと針葉樹林帯になった。 革靴で飛ばして下ってきたので、足の指が擦れて痛くなってきた。 思うようにペースが上がらない。沢と合流するところに水場があった。 水筒を満たしてもうひと息だ。河川のダム工事現場から先は林道歩きになった。 林道を10分ほど歩き、青木鉱泉の道標に従って曲がるとまた山道に入った。 工事現場の横を通り、ドンドコ沢を渡って鳳凰小屋への登山道と合流。 16:30 予定より30分遅れて青木鉱泉に着いた。